知るは楽しい「いちまいの絵 生きているうちに見るべき名画」原田マハ

小説以外
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いちまいの絵 生きているうちに見るべき名画

 

先日、原田マハさんの「常設展示室」を読みました。


常設展示室: Permanent Collection

 

「常設展示室」は物語のなかで絵画が扱われていましたが、今回は原田マハさんが絵そのものについて綴っておられます。

 

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本書の見どころ

なんといっても見どころは、新書でありながら解説されている絵画すべてがカラーで収録されている点です。

 

まず絵そのものを味わうこともできます。

著者の解説を読みながら、絵を見比べることもできます。

著者の解説を読んだ後に、またじっくり絵を眺めることもできます。

単に絵そのものを楽しむこともできるし(著者によって厳選された絵は、見応えのあるバリエーションに富んでいます)、著者の解説を読むことで絵に対する見方、味わい方も彩りを増すこともできます。

 

大学で美術史を専攻されて、実際に絵に携わる仕事に就かれていた、そして現在は作家として活躍されている著者ならではの文章は、絵画に疎いわたしでも興味深く読むことができました。

 

ちなみにわたしは、この本を夜寝る前のお楽しみにして、毎晩2編ずつ読んでいました。

ひとつひとつはそれほど長くなく読みやすいので、ちょっとずつ読むのも、絵画を少しずつ楽しむような感覚で粋です。

 

また、扱われている作品もピカソやモネ、ゴッホなど誰もが聞いたことのある有名な画家のものもたくさんあるので、親しみやすいと思われます。

 

特に気になったものを3つ取り上げてみる

いちまいの絵につき、画家の生活史、当時の時代背景、絵そのものの解説、そして著者の個人的な感想で構成されています。

今回は、全26点から個人的に選りすぐって3点を取り上げてみます。

 

一枚目 アヴィニヨンの娘たち パブロ・ピカソ

ピカソは唯一、本書で2作品取り上げられています。(ちなみにもう一点は「ゲルニカ」です)

4月に大原美術館に行ったときも、ピカソの作品は数点ありました。数としては西洋画家でいちばん多かった。

わたしはピカソはこれまでそんなにお目にかかったことがなくて(好みの問題もあるけど、ルノワールのほうがお目にかかった数は多い)一度にそんなにたくさんのピカソを見たのは初めてでした。

 

でも「やっぱりピカソはよくわからない」という素人の感想を抱きました。

 

超素人丸出しでお恥ずかしいのですが

  • ピカソはとにかく作品数が桁違いに多い
  • 時期によって作風が異なる
  • とにかく時代の最先端を切り開いた

ぐらいのイメージです。

 

でも、なんかこの「アヴィニヨンの娘たち」はちょっと目を惹かれました。

 

ピカソの偉大さを、改めてわかりやすい切り口で解説されているのを読んだら「ふん、ピカソのどこが良いんだか」と捻くれていた感情が(わたしはみんなが良いというものはなんだかうさんくさいと思うところが時々ある)、「まあ、ピカソも悪くないなあ」と一丁前に考えを改めました。(単純ともいえる)

 

無知というのは怖いものです。

同時に、知ることで世界はもっと開けてくる。

 

わたしはピカソのことは全然知らないけど、知らないのに「好きじゃない」は怖いです。

 

もうちょっと知りたいと思うようになりました。

まあ、とっても難関ですけど。それも面白みではありますよね。攻略のしがいがあるというか。

 

 

二枚目 秘儀荘「ディオニュソスの秘儀」 作者不明

こちらは、ポンペイの遺跡から発見された壁画です。作者は当然のように不明で、紀元前2隻頃の作品だそうです。

 

著者がこの作品の解説の締めくくりに書いた文章に、思わず付箋を貼りました。ちょっと長いのですが、引用してみます。

 

脈々とした人類の営みを、はるかな過去から引き継がれてきたアートを思うとき、不思議な安堵感が胸を満たす。大丈夫、どんなことでも乗り越えられる。私たち人間は、いついかなるときも、アートをあきらめなかった。その証拠がルーブルに、ポンペイに、世界中に遺されている。私たちはそれを誇りにし、明日への自信につなげればいいのだ。

(「いちまいの絵 二枚目 秘儀荘「ディオニュソスの秘儀」 作者不明 P54)

 

アートってなんなのだろう。アートは、わたしたちのお腹を満たしてくれるものではない。なにかを生み出すものではない。でも、かたちにならないものを生み出す。こころを豊かにする。こころを満たす。

アートって、文字が生まれたのと同じくらい、人が人たらしめるものです。

 

その普遍性を、この「ディオニュソスの秘儀」は静かに物語っているようです。

 

二十六枚目 道 東山魁夷

いきなりラストに来ました。

「常設展示室」でもラストを飾っていた、東山魁夷の「」です。本書で唯一の日本画家の作品でもあります。

 

数年前に、関西でも東山魁夷の作品を取り上げた展覧会がありました。電車の吊り広告で大々的に取り上げられていて、わたしはそのときに初めて東山魁夷のことを知りました。

 

あー、行っておけば良かったなあと悔やまれてなりません。

 

ふわりとした色彩のなかに込められているものを、知ってしまうと、知らなかったときよりもその色彩の深みをもっと研ぎ澄ませて見たくなってしまう。

 

結び

わたしはもう単純に絵を見るのが好きという感覚的な直感だけにほぼ頼っている人なので、あんまり美術史とか画家の背景とか時代背景にはこれまで熱心ではありませんでした。

でも、原田マハさんの作品や、今回の本書のような視点をいただいて見ると、それはそれで悪くないと思います。

例えば、「ジヴェルニーの食卓」を読んで、マティスやドガの魅力を知ったように。(本書にもこのふたりの作品は登場します)


ジヴェルニーの食卓

 

知ることで、世界が奥行きを増します。ワクワク感が増します。

子どもが知的好奇心で世界を拡げるように、大人になってもワクワクは拡がるのです。

 

関連情報


いちまいの絵 生きているうちに見るべき名画


常設展示室: Permanent Collection

 


ジヴェルニーの食卓

 

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